瓦のはなし
2020年02月20日
家づくり
ものづくりのはなし

今、愛媛県今治市で進んでいる現場は瓦葺工事が完了したところです。


愛媛県今治市はタオルで有名ですが
「菊間瓦」という瓦のブランド産地でもあります。
いつもは、関東でも淡路島の「淡路瓦」を使用するのですが
今回は地元産の瓦、「菊間瓦」を敷いてもらいました。
現場のご近所は、古い家屋が残る集落です。
散歩しながら瓦を注意して見ていると
それぞれの家にそれぞれのデザインの鬼瓦が見られます。




この集落の家々の鬼瓦はほぼ100%、「立浪」という波を模した形が基本のようです。
屋根瓦は、火事対策で使われるようになったこともあり、鬼瓦には厄除け以外に
火除けの意味合いも込められているようで、水や海、波に関連したデザインが多いのです。
波の形に合わせて、鶴亀など子孫繁栄の願いを込めた形も見られます。
「菊間瓦」の産地は、瀬戸内の海沿いの菊間という地域で瓦の製造工場さんが立ち並んでいます。
今回の現場では菊銀さんという瓦メーカーさんにお世話になりました。

瓦造りの工程の様子も見学させて頂きました。
瓦のプレス機が開発されたのは1970年代後半だそうで、
プレス機導入以前は、木製の型に板状にした粘土を押し付けて叩いて一枚一枚成型していたのだそうです。
ですがプレス機がある現在でも、基本の形の成型以外のほとんどの工程が人の手に依るものなのにびっくりしました。


菊銀さんには、鬼瓦や水板という屋根の装飾部分を製作する鬼師さんがいらっしゃいます。
社長さんのまだ若い娘さんです。
お祖父様が鬼師だったため、小さい頃から鬼師の仕事を見てこられて仕事を覚えたのだそう。


日本の伝統的な手仕事が
若い人の手に渡り繋がっていく「希望の光」を感じた、貴重な時間でした。
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PROFILE プロフィール
一級建築士
藤田 敦子 Atsuko Fujita
1971年大阪生まれ。淀川のほとりのベッドタウンで育つ。神戸の設計事務所にて住宅・集合住宅の設計に携わる中、阪神・淡路大震災を経験。その後ヨーロッパへのべ半年放浪し様々な人々の暮らしと有名建築を見て歩く。帰国後上京し、都内中規模ゼネコンにて住宅・店舗・オフィスビルなどの設計・現場管理に携わる。2006年に無垢の木と漆喰の家づくりに出会い、2008年独立し一級建築士事務所Bois設計室を開設。現在に至る。
藤田 敦子 Atsuko Fujita
